| +puzzlement−後編−+ |
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どちらが先に手を伸ばしたのか、もうわからない。 部屋の中に入るなり重なる影。 ドアが閉まりきるのも待てず互いの唇が合わさった。 ヒイロがオレを壁に押し付け更に口付けを深いものに変えていく。 オレもそれに応えるように夢中になった。 そのまま唇は離れず互いが着ていたシャツを床に落とした。 ヒイロがオレのズボンの中に手を入れTシャツを捲る。 それに気づいてオレもヒイロのシャツを捲くった。 そして同時に着ていたものを脱ぎ捨てた。 その一瞬だけ唇は離れたが、またすぐに重なりあった。 ベルト、靴、と次々に着ているものを剥いでいく。 唇はまだ離れる事はなくそのままベッドへと向かった。 見つめ合う瞳はどちらも逸らされることはなく、ただ互いの青を映していた。 肌を辿る手は優しく、触れられる箇所は熱い。 次第に上がってくる熱を開放したくてキスを強請った。 それにヒイロは答えてくれて互いに高めあった。 心地良い余韻に互いに浸りながらまたキスをした。 聞こえてくるのは互いの呼吸と鼓動。 身体をピタリと重ねれば聞こえてくる音は一つに重なる。 そして……次の瞬間鼓動は跳ねた。 激しく動くヒイロに合わせるように動くオレ。 互いが互いを求めてる瞬間。 快感が体中を駆け抜ける。 そして辿り着く頂点。 ……オレの記憶はそこまでだった。 気が付けば朝で、ヒイロの腕の中で眠っている自分がいて。 オレは何があったのか瞬時に思い出すことができずそのまま固まってた。 けど、頭より身体が覚えていた。 気だるく重たい腰をゆっくり持ち上げ、ヒイロを起こさない様にそっとベッドを抜け出した。 一刻も早くこの部屋を出ないと。 そんな思いで立たない腰を無理やり動かし、着る物も適当に逃げるように部屋を飛び出した。 何でこんなことになったのか……。 あの時もみんなで酒を飲んでいた。 珍しくヒイロも付き合って、それが嬉しくていつもよりハイペースだったのかもしれない。 最後はオレとヒイロだけになってた。 アイツと二人で酒を飲むことなんて一生ないって思ってたから、調子に乗ったのが失敗だったのかもしれない。 もうどうやってお開きにしたのかも覚えてないし、どうやって部屋まで戻ったのかも覚えてない。 ただ気が付けばアイツとキスしてる自分がいた……。 階段を上り角を曲がると、そこには腕を組んで壁に凭れ掛かっているヒイロがいた。 何でこんなとこにいんだよ! あまりにもビックリして眠気も酔いもすっかりどこかに飛んで行った。 「な、何してんだよこんな所で?」 少しどもったのは仕方ない。 何とか上手く部屋に戻らないと。 そんな心理でオレは早口で今までアイツらと飲んでた事を話した。 「お前もそんな所にいないで早く寝ろよ。」 おやすみと言ってさり気なく且つ足早にヒイロの前を通り過ぎようとしたけど、あと1歩のところで腕を捕まれた。 心臓の鼓動が一気に早くなるのを感じる。 「な、何?」 ドキドキしてる。 「話がある。」 ああ、とうとう来たか……。 でも今はまだ心の準備が出来てない。 それになるべくこの話題は避けたかった。 「明日じゃダメか?オレ眠いんだけど。」 「今だ。」 そう言うなりヒイロはオレの腕を掴んだまま歩き出した。 「ちょっ、離せって、ヒイロ!」 無言のまま連れて行かれたのはヒイロの部屋。 ヒイロが後ろ手で鍵をかけたのがわかった。 話が済むまでは返さないってか。 オレは仕方なく空いてるベッドに腰掛けた。 動揺を感じ取られてはダメだ。 「で、話って何?」 早くしてくれよ、と付け足して話を促した。 「………。」 ヒイロは何かを探るようにオレをじっと見つめてる。 その瞳から逃げたいけど、逸らしてしまえば認めているようなものだ。 暫く無言で見詰め合ったけど不意にヒイロが視線を逸らした。 「あのさー用がないんだったら戻るぜ。」 そう言いいながら立ち上がろうとすると、ヒイロに阻まれた。 「まだ話は終わっていない。」 「……じゃあさっさと話してくれよ。」 「お前は……。」 ヒイロの声が若干イラついてるように感じるのは気のせいだろうか。 「なかった事にするのか?」 「な、何の話だ?」 「とぼけるな。お前も覚えているんだろ?」 ヒイロがオレの方に近づいてくる。 やっぱりヒイロは覚えている、あの時の事を。 どうしよう? お互い酔っていたとはいえ、あんな事をしてしまったんだ。 ヒイロはどうして欲しいんだろう。 ここは1発殴られておいた方がいいのか。 それとも素直に謝っておくべきか。 戸惑いと不安が頭の中で渦巻いている。 「あ、あの時は悪かったよ。でもお互い酔ってたし。ほらなんだ、若気の至りってやつにしとかねぇ? なかったことにしようぜ?その方がお互いいいだろ?」 結局ぺらぺらと話してしまった自分がちょっと情けない。 「なかった事にするのか?」 「えっ?」 ヒイロの眼差しがきつくオレを睨んでいる。 オレはまたあいつを怒らせるような事を言ったのだろうか。 「お前はなかった事に出来るのか?俺はちゃんと覚えている。」 「……ヒイロ。」 「デュオ……俺は酔ってなどいなかった。」 酔ってなかったって、じゃあアレは何だったんだ? ヒイロがオレの腕を乱暴な動作で掴んで立たせた。 「ッツ、ヒイロ!」 掴まれた腕が悲鳴を上げそうになるくらいに痛い。 「お前は忘れられるのか?忘れられるくらいどうでもいい事だったのか?」 「違うっ!……なんで……なんでだよ?忘れちまった方がお互いにいいじゃん。」 ヒイロが何を考えているのかわからない。 謝ってほしい訳でも、忘れてほしい訳でもなさそうだ。 寧ろ忘れようと、なかったことにしようとしている事に怒っている。 こんな訳のわからないヒイロに正直戸惑いを隠せない。 「なんであんな事になっちまったんだよ……。」 心の中の呟きが声になって出た。 「そうしたいと思ったからだ。」 「えっ?」 意外にも返事が帰ってきて、思わず至近距離でヒイロを見つめてしまった。 「何故だかわからないが、あの時そうしなければならないような気がした。 お前は拒絶しなかった。俺はそれが嬉しかった。」 ぼそぼそとあの時の事を思い出すかのように話すヒイロ。 「嬉しかった?」 「ああ。」 「後悔してない?」 「ああ。」 「オレの事嫌ってなかったっけ?」 「そんな事はない。」 「……お前も不安だった?」 「……少しな。」 「そっか……。」 何だか一気に体中の力が抜けて、オレは腕を掴まれたままベッドに腰を下ろした。 不安だと思ってたのはオレだけじゃなかった。 アイツもこの1年少しは悩んでたんだ。 そう思うと少し可笑しかった。 悩んでるヒイロなんて想像出来ない。 「ヒイロ。オレが忘れたかったのは……お前の気持ちが分からなかったからだよ。」 考えれば簡単な事だ。 オレはヒイロの気持ちが知りたかったんだ。 オレの事をどう思ってるのか? 嫌われるのが恐くて聞けなかった。 でも今なら分かる。 自分の気持ちもアイツの気持ちも。 「オレも嬉しかったよヒイロ。」 そう笑顔で言った。 ヒイロが近づいて来て座ってるオレを抱き締めてくれる。 オレもアイツの背中に腕を回す。 「ヒイロ。本当は全部覚えてるよ。」 自分で言ってて恥ずかしい。 ヒイロの唇が近づいてくる。 今度はそっと目を閉じた。 「……酒臭い。」 「……さっきまで飲んでたからな。」 ははと笑って誤魔化して、オレはヒイロの腕から抜け出した。 「どこへ行く?」 「風呂。」 まずはシャワーを浴びて酒を抜かないとな。 「上がったらさ、一緒に寝ようぜ!」 寝るだけだからな、と付け足して振り向けば、そこには少し嬉しそうな顔をしたヒイロがいた。 それを見てオレも嬉しくなった。 さっさと入りますか! オレはシャワールームの扉を開けた。 あとがき |