| +puzzlement−前編−+ |
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「はぁ〜。やっぱ行かないとダメだよな〜。」 手の中にあるのは地球行きのシャトルのチケット。 それを見ては溜め息が漏れる。 年に一度、元ガンダムパイロット達がカトルの別荘で集まる日。 それがもう間近に迫ってきていた。 普段なら喜んで飛んで行くとこだが、オレはあまり乗り気じゃなかった。 「行かなかったらカトルに怒られるだろなー。」 はぁ〜ともう一度溜め息を吐いてテーブルに突っ伏した。 「アイツも来るよな……。」 それを考えるとまた一つ溜め息が零れるのだった。 「デュオ!よく来てくれましたね!」 別荘に着くなりカトルが出迎えてくれた。 「久しぶり。元気そうじゃん。みんな来てんのか?」 「ええ、デュオが最後です。」 さぁこっちに、そう言ってカトルはゆっくり歩き出した。 みんなと言う事はやっぱりアイツも来てるんだ。 ………会うの嫌かも。 会ってどんな顔をすればいいのかまだわからない。 それに何を話せばいいのかもわからない。 出来ることならこのまま帰りたい。 そんな事を考えてる間にカトルが奥の扉を開けた。 そこは30畳ほどある大広間。 「デュオ?どうしたの?さぁ早く入って。」 「あ、ああ。」 促されるままに部屋の中に入ると真っ先にアイツと目が合った。 「よっ久しぶり!」 ……オレってすごいじゃん。 さっきまでどうしようって思ってたのに、もう笑顔が作れてるなんて。 相変わらず何も言わないアイツからそのまま自然に目線を逸らし、五飛の背中に伸しかかった。 「うーちゃん、元気?相変わらずだなー。」 「……貴様、喧嘩を売っているのか?」 「えーやだなー。挨拶じゃん。」 余計に禿るぞ、とは流石に言えなくて話題を変えた。 そんなオレ達の遣り取りを見て、トロワがお前も変わってないなと会話に入ってきた。 そこにカトルも加わって自然に話は盛り上がる。 ヒイロだけが少し離れた所で読書を続けていた。 だがアイツがずっとオレの方を見てたなんてことにオレは全く気づいてなかった。 その後、オレ達は取り留めの無い会話を楽しみながら食事を取った。 ヒイロとは一番遠い席に座ったので殆ど会話をすることはなかった。 全く話さないのも悪いかなと思って話掛けたけど、ちゃんとした返事は帰ってこなかった。 いつもならオレが更に喰らい付いていくんだけど、今日はそれをする気にはなれない。 けどそれはただ席が離れているからだと自分に言い聞かせた。 他の奴等もそれを不審に思ってる感じはない。 でもオレはこれ以上ヒイロと一緒の空間に居たくなくて、食後の運動と称して散歩がてら庭に出た。 奥へと進んで行くと少し開けた場所があった。 オレはそこにあるベンチに腰掛けた。 一人になると自分が少し緊張していたんだとわかる。 身体の力を抜いて空を見上げると、そこには満天の星空が広がっていた。 明日もアイツと一日中一緒にいるのかと思う気が滅入りそうになる。 もう一年も前の事なのに、昨日の事のように気が重い。 アイツはあの時の事を覚えているのか? 聞きたいけど……聞いてしまえば何かが変わってしまいそうで正直恐い。 それに聞いたところでどう接したらいいのかわからない。 それにアイツの態度は悔しいくらいにいつも通りだ。 もしかしたら覚えてないのかもしれない。 それが一番自分にとっては嬉しい答えだ。 そうだったらオレもいつも通りのデュオ・マックスウェルでいられるのに。 なんであんな事になってしまったのか。 折角地球に来てるのに、仲間と久しぶりに会えたのに、どうもモヤモヤした気持ちが治まらない。 ぐるぐると迷いの坩堝に嵌まりそうになってた時、誰かが近づいてくる気配がした。 振り向くとそこにはカトルが立っていた。 「デュオ、こんな所にいたんですか?探したんだよ。」 何をしてるのかを聞かれ、空を見てたと答えた。 「地球で見る月はキレイだよな〜。」 「デュオは空を見るのが好きだよね。」 昔一緒に行動してた時も空を見てたでしょ、と続けて。 「そうだっけ?よく覚えてるな。」 確かに、何か考え事をする時は空を見ていたのかもしれない。 「ねぇデュオ、……ヒイロと何かあったの?」 鋭い一言が飛んできてドキリとした。 「別に、何もないぜ。」 聡いカトルに出来る限りの自然体で返した。 「オレとアイツで何かある訳ないだろ。」 「だといいんだけど。」 「それより何か用があって来たんじゃないのか?」 オレは話題を変えたくてカトルに尋ねた。 「そうでした。今みんなで飲んでるんですけど、デュオもどうかと思って。」 わざわざ誘いに来てくれたらしい。 何もないと言った手前、ヒイロと一緒に居たくないとは言えずオッケイした。 カトルと二人で戻れば、そこに居たのはトロワと五飛だけ。 「あれヒイロは?」 オレの疑問をカトルが代弁した。 「先程部屋に戻った。遣りかけの仕事が残っているらしい。」 トロワが説明してくれた。 何だかほっとしたようなそれでいて少し物足りないような気持ちになる。 さっきまで顔を合わせたくないと思ってたのに……。 もしかしたらヒイロもそう思って戻ったのかもしれない。 またさっきのモヤモヤが押し寄せてきそうだったので、その変にあるワインをグビっと飲み干した。 「おい、大丈夫か?」 「大丈夫、これくらいで酔わないって。」 そうやってオレ達の飲み会が始まった。 どれほど飲んだのかわからない。 けど何も考えられない程も酔ってない。 結局2時間ほどみんなで飲んで会はお開きになった。 それぞれが部屋へ戻って行き、自分も部屋に向かって歩いていく。 眠くなってきた頭を何とか起こしながら階段を上がり角を曲がった。 そこにある人影。 影を辿って前を向くとそこには腕を組んで壁に凭れ掛かっているヒイロがいた。 眠気なんて一気に吹っ飛んだ。 続 あとがき |