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マッサージルームに一本の電話が鳴った。 「はい、こちらマッサージルームです。はい、はい、大丈夫です。はい、承りました。失礼致します。」 主任は電話を切りこちらを向いて言った。 「今スイートルームからマッサージの依頼があった。誰か手の空いてる奴はいるか?」 主任の言葉に周りの者がざわざわとどよめきたつ。 「スイートルームからだってさ。」 「お前入ったことあるか?」 「そんなことより今あそこに泊まってるのって……。」 「そうだ、ウィナー家の当主、カトル様だ。」 主任の言葉に皆の口が一斉に止まった。 「主任…、ウィナー家の当主がなぜマッサージなんかを依頼してくるんですか?」 一人の男が質問した。 「さあな、とにかく誰か行ってくれる奴はいないのか?」 主任の再度の要求に誰も答える者はいない。 皆、スイートルームにもウィナー家の当主にも興味はあるのだ。 だが金持ちで、若くて、有能な当主にマッサージが出来るほどの実力も勇気もなかった。 「誰もいないのか?……ヒイロ!お前行ってくれないか?お前なら年も近いし腕も確かだ。 それに度胸もある。頼む。」 「……了解しました。」 俺は返事を返してそのまま部屋を出た。 階段を上りながら一人、これから会う当主のことを考える。 何を考えてマッサージなんか頼んできたのか? 当主ともなれば側近がいて、マッサージくらいしてくれるんじゃないのか? それともおれ達の腕を試そうとしているのか? ここのホテルはそれなりに有名で人気が高く、多くの著名人がやって来る。 これはいい機会かもしれない。 ウィナー家の当主に認められればもっといい職に巡り会えるかもしれない。 丁度この仕事にも飽きてきたところだ。 俺は新たな野望を持ってスイートルームのチャイムを鳴らした。 ピンポーン。 チャイムを鳴らし当主が出てくるのを待つ。 「はいは〜い!」 ガチャっと扉が開き、出てきた人物を見て俺の時が止まった。 な、なんて可愛いんだ!! 俺の心がフォーリンラブだと叫んでいる! こんなことがあっていいのか?あっていいのか〜! その大きな瞳、ふっくらしたほっぺ、形の良い唇、全てにおいて俺の好みだ!! 「あの〜。」 おっといけない。すっかり自分の世界にトリップしていた。 目の前のエンジェルが不審な目で俺を見ている。 「失礼致しました。私はヒイロです。マッサージの件でお伺いしました。」 まずは最初が肝心だ。 「アンタが?まっ、入ってくれ。」 そう言って奥の部屋へと歩いて行く。俺もそれに続いて部屋に入る。 「あの、失礼ですが当主は?」 「ああ、カトルか?今は大事な商談中。」 「ではマッサージを頼まれたのはあなたですか?」 「そうオレ。」 オレ!オレと言ったのか?もしかしなくても男なのかぁっ!!ヒイロ大ショック。 一目会ったその日から恋の花咲く事もある。そしてその花が一瞬にして萎んで行きそうだ……。 いや、大丈夫だヒイロ・ユイ!男でも関係ないと本能が告げているぞ!突き進めマイライフ! 「ではお客様、早速始めてもよろしいでしょうか?」 「ちょっと待った。」 「?」 「それやめてくんないかな〜。」 彼がちょっと困った顔で言ってくる。 俺は何のことを言われているのかがよく分からない。 「その敬語やめてくれ。…アンタ何歳?」 「22ですが。」 「マジ?じゃ同じじゃん。オレどうも敬語って苦手なんだよな〜。普通に話してくれよ。」 「……わかった。」 「OK!じゃ頼むな。」 言うなり横になろうとした彼を慌てて止めた。 「その前に名前を聞いてもいいか?」 「あれ、言ってなかったっけ?オレはデュオ。よろしくな!」 デュオ、デュオ、なんて可愛らしい名前だ!骨に刻んだぞ。 早速横になったデュオの背中をゆっくりと触っていく。 まずは軽く触れて凝っている所を探し、見つけた箇所を丁寧に押していく。 「あっ!」 「ど、どうした?」 強く押しすぎたか?それとも妄想しているのがバレたのかっ! 「くすぐったい。」 「そうか……。」 ふぅ、危ないところだった……。気を取り直してマッサージを続ける。 「アッ!」 今度は何だ?今度は何も妄想してないぞ! 「そこ、すっげぇ気持ちいい〜♪」 うっとりした表情でそう言われた。 ズキューーーーン!! 今の音は何だ?……そうか!俺の心臓が打ち抜かれた音か! 俺の心臓を打ち抜くとは……流石だなデュオ! だが、俺はまだここで倒れる訳にはいかないのだ! お前の裸を見るまでは倒れられないのだぁーー! 意識をしっかり持って集中する。 だが、「んっ。」とか、「アッ。」とか「そこ…。」とか言われると流石の俺も非常〜にヤバイ。 それでなくても、程好くついた筋肉や、シャツの上からでも分かるほど綺麗に浮き出た背骨に 俺の理性が吹っ飛びそうなのだ。 それにこの声、上気した頬、きゅっとしまった腰のライン。 コイツ、もしかしてわざとやっているのか? そうか、そうなのかぁ?俺を試しているのかーーっ? くっ、やるなデュオ!負けそうだ……。 負ける?こんな美味しい状況になぜ勝たねばいけないのだ。 そうだ、負けてしまえばいい。己の感情に従う事正しい事だ。 思ったら即行動だ。俺はデュオのシャツを捲くろうと手を伸ばした。 ピピピ…ピピピ… 丁度マッサージ終了のアラームが鳴った。 ちっ、時間切れか! 「あっ、終わったのか?お前上手いのな、身体が軽くなったよ。」 にこっと笑って言うデュオはとてもすっきりした顔をしている。 「サンキューなヒイロ!オレさっきからずっと寝そうだったんだ。だからこれから寝るな。」 後は勝手に出て行ってくれと言わんばかりにデュオが本格的に眠り始めた。 一人取り残された俺はどうしたらいいんだ?聞きたい事が山ほどあったのに眠ってしまうとは。 この悶々とした気持ちを静めるにはどうすればいい? 答えは簡単だ。眠っているデュオに触れればいい。 デュオにこれからすることを妄想してニヤリとした。 あんなことやこんなことをしてみたい!もう誰も俺を止める事は出来ない! 俺はもう一度デュオに近づいてキスをしようとした。 「何してるのかな?」 いきなり扉の方から声がして、慌てて振り向いた。 「?!」 そこにいたのはウィナー家の当主カトルだ。 扉に寄りかかって腕を組みながら俺のことを睨んでいる…様に見える。 「君は誰?なんでここにいるの?」 腕を組んだままの状態でこちらに向かってくるカトル。 「ああ、マッサージ師の人か。」 俺の名札をちらっと見て興味なさそうに呟いた。 「もう終わったんだったら帰っていいよ。」 2度も邪魔が入って状況は完全に不利だ。デュオに触れるいい機会だったのに。 俺は何も言えずその場を後にするしかなかった。 「そうだヒイロ君。」 呼ばれて俺は振り返る。 「なんでしょうか当主様?」 「気づいてない様だから教えてあげるけど……鼻血…でてるよ。」 耐え切れなかったのか、カトルがいきなりプッっと吹き出した。 鼻血……俺はすぐさま鼻に手を当てる。ぬるっとした感触が手に伝わった。 しまった。先程の妄想かっ!!妄想如きで鼻血を出すとは! 俺の、俺のミスだーーー!! 俺は逃げる様にしてその場を走り去った。 アイツの笑う声がいつまでも耳について離れなかった。 その日の夜。 必死にデュオとカトルの宿泊名簿を探すヒイロの姿があったとか………。 「ふふふ……見つけたぞ。覚えてろよカトル!そして、待っていてくれデュオ!」 彼は名簿を懐に入れその場を後にした。 これがデュオへのストーカーの始まり………なのかもしれない。 あとがき 『ALL HAPPY』の寿様とマッサージ話で盛り上がったので書いてみましたvv でも終わってみれば全然マッサージ話になっていないという……(^▽^;) ヒイロはデュオに一目惚れ。あれこれしようとするのですが上手くいかず。 今回はギャグ調なので、邪魔が入るのですよ。 ヒイロファンの方には申し訳ないのですが、 どうも私がギャグっぽくしようと思ったら、ヒイロさん危ない人になります(笑) この後ヒイロはまず手始めにデュオの近所に引越します(笑) そして新たな物語が始まるのですよ! もう全てが中途半端で申し訳ありませんでした〜m(_ _)m 2006.04.29 葵 |