| +SNOW+ |
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「ヒイロ、雪積もってる!!」 俺は窓を開けながらヒイロに話かけた。 ヒイロはソファで新聞を読みながらこっちをちらっと見た。 「なぁ、外行こうぜ!」 「何故だ?」 「だって、雪積もってるんだぜ!雪だるま作りたくない?」 俺はそう言いながら、窓を閉めてヒイロの隣に座った。 「作りたくない。」 と素っ気なく返されたが、俺はそんなことではあきらめない。 「えー、そんなこと言わずに行こうぜ!なぁいいだろ。 どーせ新聞読んでるだけなんだし、ちょっとくらいいいじゃん?」 「一人で行けばいいだろ?」 「だーめ、一人じゃ意味がないんだよ。」 そう言う俺にヒイロが新聞から目を離し不思議そうになぜだ、と聞いてくる。 「だって雪だるまは一人で作っても面白くないだろ。あーゆうのは1人より2人なんだよ。」 聞いた俺が馬鹿だったとばかりにヒイロが新聞に目を戻す。 (あっ、なんか今バカにされた気がする…) 「そんなに嫌なのか?……ただ俺はお前と一緒に雪を見たかっただけなのに……。」 最後の方は少し声が小さくなっちまった。 ヒイロは雪が嫌いなのか? それとも俺と一緒に雪だるま作るのが嫌なのか? ………これ以上無理に誘うのも悪いし、仕方がない、寂しいけど一人で行くか。 俺はソファから立ち上がって玄関に向かう。 「行くのか?」 奥からヒイロが聞いてくる。 「ああ、ちょっと行ってくる。すぐ戻るよ。」 笑って返事をして家を出ようとしたら、呼び止められた。 「俺も行く。少しだけ待っていろ。」 そう言って自分の部屋にコートを取りに行った。 さっきまで嫌とか言ってなかったっけ? やっぱり雪だるま作りたかったとか? 色々考えてたらヒイロが戻ってきた。 「どうした?」 ヒイロの顔をじっと見てたら訝しげに聞かれて、何でもないと答えた。 「行くぞ。」 ちょっと納得いかないけど、まっいっか。 俺はヒイロの後ろについて行った。 家から少し離れた空き地にやって来たが、人は誰もいなかった。 まだ人が踏み込んでいないそこは新雪そのものだ。 俺は嬉しくてヒイロよりも先に入って足跡をいっぱいつけた。 その様子をヒイロが黙って見つめている。 「ヒイロー!雪だるま作ろうぜ!」 俺は早速雪を丸めだしたんだけど、ヒイロが動く気配はない。 「どした?作んないの?」 「作ったことがない。」 「へっ?」 「訓練に雪だるまは必要なかったからな。」 「でも見たこと位あるだろ?」 コロニーでも雪は降る。(人工だけど) ヒイロは本当に見たことがないのだろうか? それともヒイロのいたとこでは雪は降らなかったとか? 「多分。」 俺の考えはヒイロの言葉に消された。 多分ね、興味ないってことかな。 「んじゃ、一緒に作ろうぜ!簡単だし。」 こうやって雪を丸めるだけだ、と実際に実演しながら説明した。 まぁ雪だるま作るのに説明なんかいらないわけで、せっせと二人で作業したら短時間ででかいのが出来た。 ヒイロ、最初は乗り気じゃなかったくせに、いざ作り始めたら俺よりでかいの作りやがんの! 負けず嫌いな性格なのか、結局あいつが胴体部分を作りやがった。 だってこのまま競い合ってたら、空き地の雪がなくなるまで俺よりでかいの作りそうなんだもん。 初めての遊びを覚えた子供みたいでちょっと可愛かったとか言ったら怒るんだろうな。 「あ〜疲れた。お前マジに作りすぎ!」 出来上がった、異様にでかい雪だるまを見ながらヒイロに言ったら、 作りたかったんだろう?と少し微笑みながら言われた。 なんでそんなに嬉しそうなんだよ? あんなにでかいの作ったくせに、息一つ乱れてないのもムカツク。 コイツ、絶対俺より楽しんでたぜ! 「満足したのか?」 「ああ、ヒイロさんのお陰で満足しました。」 「なら、帰るぞ。」 「へーへー。」 俺はもう一度作った雪だるまを見た。 自分で言うのも何だけど、会心の作だ! なんせ俺とヒイロの共同作業だし、と思うとちょっと嬉しい。 でもすぐ解けちまうんだろな。 何か思い出に残るような事したいな〜。 「あっ、ちょっと待ってくれ!」 帰りかけてるヒイロを呼び止めて、俺は急いで準備をした。 「何を描いている?」 「もうちょっとだからさ、っと出来た!」 俺は雪だるまの前に相合い傘を描いた。 「ヒイロ手貸してくれ。」 俺が得意げに左手を差し出すと、案の定左手が差し出された。 「そうじゃなくて、手繋いでくれ。」 ヒイロは訳がわからないみたいだけど、なんとか繋いでくれた。 「じゃあ、俺がせ〜のって言った後、一緒に後ろに倒れてくれよ。」 「何故だ?」 おいおい、そこでそう聞くか? 「訳は後で説明するからさ、頼むよ!後でお前の頼み聞くからさ!」 「………わかった。」 なんだその間は、それになんか嬉しそうに見えるのは気のせいか。 「じゃ行くぜ!せ〜のっ!」 ドサッ。 「・・・・・・・・・。」 「・・・・・・・・・。」 二人一緒に雪の上に寝転がった。 手は繋がれたままで、お互い顔を見合わせた。 俺はすごく嬉しくて、それが顔にでてて満面の笑顔だ。 自分でも何がそんなに嬉しいのかよくわからない。 でもきっとそれはヒイロが隣にいて、手を繋いでくれていて、黙って付き合ってくれてるからだ。 ヒイロが側にいることが嬉しいんだ。 「デュオ、これはなんだ?」 ヒイロがこの状況を説明しろと言わんばかりにこっちを見てる。 「なにって、昨日テレビのCMで見たんだよ。こうやって恋人同士がさー傘みたいなマークの下に一緒に横になるんだよ。」 知らねぇ?と聞いてみれば、知らないと返されて、だからなんだと聞き返された。 「なんだって言われても……お前とただやってみたかったんだ。その・・・二人がすごい幸せそうでさーいいなーって。」 ヒイロは黙って俺の話を聞いている。 「俺もコレにどんな意味があるのかなんて分からないんだけどさ。」 上手く説明出来ないでどうしようかと思ってたら、不意にヒイロがキスしてきた。 「ヒイ…んっ。」 それは冷たかった唇が暖かくなるまで続けられた。 少し息が上がって潤みそうな目でヒイロを睨んだら、しれっとした顔でこう言った。 「したかったから、した。」 「だからってこんなところで!」 「誰も見てない。」 「雪だるまが見てるだろ。」 俺がそう答えたらヒイロは少し驚いた顔をして、その後少し笑った。 「なんだよ?」 ヒイロが笑ってるなんて珍しい。 ヒイロも楽しかったってことかな? 「いや、それより気は済んだのか?」 「えっ?ああ。」 「じゃあ今度こそ帰るぞ、風邪を引く。」 ヒイロが先に起き上がって、俺が起き上がるのを助けてくれる。 「背中濡れちまったなー。」 結構横になってたから寒いかも。 でも心は満たされたかな。 「ヒイロ、帰ったら暖まること、しよ?」 俺が笑いながら提案すると、アイツも笑って了解した、と言った。 「俺の頼みも聞いてもらわないとな。」 嫌な笑みを浮かべてそう付け加えた。 げっ!覚えてやがったのか!でもまぁ楽しかったしいいか! 「はいはい、お手柔らかに。」 「行くぞ。」 そう言うとヒイロが手を差し出してきた。 「?」 俺が手を出したら、反対の手だ、と言われて納得した。 さりげないヒイロの優しさがすごく嬉しい。 俺たちは手を繋いで空き地を後にした。 あとがき |