| +Opening+ |
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少し肌寒さを感じて目が覚めた。 無意識に傍らにあるはずの温もりに手を伸ばす。 だがそこに求めるものはなく、手は空しくシーツを辿るばかり……。 そこで一気に覚醒した。 柔らかな光がカーテンの隙間から差し込んでいる。 ふとそちらに目をやると、窓枠に寄りかかって外を眺めているデュオがいた。 三つ網が風に靡いて、ふわりと揺れている。 「デュオ。」 声をかけると、デュオはゆっくりと振り返った。 「ヒイロ、起きたのか。」 優しい声と穏やかな笑顔が俺に降り注がれる。 「デュオ、風邪をひくから窓を閉めろ。」 寒いだろ、と言った俺に少し笑って、そうだな、と言ってまた笑う。 その柔らかな光を浴びた笑顔ごと抱きしめたくなって、彼の元へ足を伸ばす。 抱きしめたデュオは先程の風で少し冷えている。 「いつから起きてたんだ?」 「ん〜ちょっと前かな?」 抱きしめ返してくれる腕が心地よくて、背中を撫でてくる手が愛しくて、更に力を込めて抱きしめた。 「ヒイロ?」 どうした?と聞いてくる唇を自分のそれで塞いだ。 「ん。」 軽く舌を絡ませた後、もう一度軽くキスをした。 デュオ、と呼んでまた抱きしめる。 「どうしたヒイロ?まさか起きたら俺がいなくて寂しかったとか?」 くすくす笑いながらデュオが髪の毛を梳いてくれる。 言われた台詞に少しだけ肩を揺らし肯定を返してしまって、お返しとばかりにデュオをベッドに押し倒した。 「うわっ、ヒイロ!?」 もう何だよ、と言いながら本気で怒っていないのが分かる。 「お前がどこかに行ってしまったのかと思った。」 デュオの胸に顔を埋めて小声で吐き出した。 そしてそのまま目を閉じてデュオの心臓の鼓動を聴く。 ドクドクと規則正しいリズムが刻まれていることに、ひどく安心している自分がいる。 「何甘えてんだよ。」 デュオが俺の頬に両手を添えて顔を上げさせる。 「なぁヒイロ…、俺はちゃんとここにいるよ。お前の側にちゃんといる。」 そう言って触れるだけのキスをくれた。 それはとても俺の心に響いた。 「そうだヒイロ。A Happy New Year!今年もよろしくな!」 起き上がって、笑顔をくれるデュオがとても愛しい。 「お前は言ってくれないの?」 俺の顔を覗き込みながら聞いてくる。 「あけましておめでとう。デュオ…愛している。」 「ヒイロ?」 愛している……咄嗟に言葉が出た。 これからもよろしくとか、そんな言葉で始まりたくなかった。 今日は特別な朝だから、だから言いたかったのだ。 今年も変わらずお前を愛している……と。 「オレもその…愛してるよ。」 耳まで真っ赤にしてデュオが顔を埋めてくる。 「あ〜もうっ、恥ずかしいヤツだな。」 「そうか?」 「そうだよ!」 「でも好きだろ?」 「う〜、好きだよっ!」 言えば返してくれる、そんな些細な会話が今日は嬉しく感じる。 もっと話せば返してくれるだろうか……そんなことを思う自分が少し可笑しい。 そう思えるのは相手がデュオだから、それ以外では駄目なんだ。 そんなことを考えていたら、急にデュオのお腹がぐう〜と鳴った。 「………。」 「腹減ったかも…。」 こいつは……どうして全く、仕様がないな。 くすっと無意識に笑いが漏れる。 「起きるか。」 「お、おう。んじゃ先に行って何か朝飯作るよ。」 言いながらキッチンに消えて行った。 その背中を眺めて自分も起き上がり、デュオの後を追った。 穏やかな朝の一時。 何気ない会話のやり取り。 そんな些細なことに喜びを感じる。 明日も明後日もずっと一緒に朝を迎えたい。 来年も再来年もずっと二人で過ごしたい。 そう思わずにはいられない。 そう願わずにはいられない。 そんな元旦の朝。 そして今日が始まる。 1年が始まっていく。 あとがき |